文芸共和国の会

考えるためのトポス

第4回「文芸共和国の会」のご案内

※岡崎佑香さんのご発表の梗概を追記しました(10/19)。

※ポスターをアップしました(10/8)。dropbox画面右上よりダウンロードできます。ご自由にお使いください。

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 本会はそれぞれ専門を異にする研究者どうしが専門の垣根を維持したまま対話すると同時に、アカデミアの閉域を超えたところで市民どうし人文知を共有していくことを目指す場です。学者だけの場所である学会・研究会でも、学者が市民に対し講義をする市民講座でもない、学者と市民が共に同じフロアにおいて思考するアゴラ(広場)です。会員制ではありませんので出入り自由です。すべて無料です。ふるってご参加ください(※本会の基本理念に関しては下のリンクを参照してください)

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※ポスター、梗概、ハンドアウト等順次公開していきます。

※本会メーリングリストでは、運営方針や具体的な開催の構想その他について闊達な議論が行われています。現在のところ、海外、全国津々浦々より、学者/市民、先生/学生の区別なくさまざまな方々に参加いただいております。メーリングリスト参加をご希望の方は「vortexsitoneあっとまーくgmail.com(逆巻)」までお願いします。

 

第四回「文芸共和国の会」を以下の日時・場所で開催します。 

 

日時:平成28年 11月19日(土)13:00~18:00

場所:北九州市立大学 本館 D-203

所在地 〒802-8577 福岡県北九州市小倉南区北方四丁目2番1号 

www.kitakyu-u.ac.jp

 

※当日、駐車スペースを10台分確保しております。お車でお越しの方は、前日までに「vortexsitoneあっとまーくgmail.com」(逆巻)まで「駐車希望」の旨銘記し、氏名・連絡先も併せてご連絡ください。当イベントに関係のない方のご利用は受け付けません。

 

 

 (13:00~10分ほど趣旨説明)

 

① 13:10~15:10

佐藤 啓介 (宗教哲学

    "死者倫理は可能なのか?

      ――死んだ人を敬うべき理由と条件を考える――"

 

レヴィナスデリダら、大陸系哲学の他者論を通じて「他者としての死者に対する倫理」という主題は、近年では広く共有されるようになっていると思われる。だが、そもそも死者を本当に他者として尊重しなければいけないのか、という点についてはまだまだ考える余地のある問題ではないかと思われる。本発表では、死者をどのように(またどの程度まで)倫理的配慮の対象として位置づけられるかという点に問題を絞り、昨今の分析系の議論や宗教学の知見を手かがりに考えたい。とりわけ、その際に主題となるのが、倫理的配慮の対象としての死者の存在論的地位であり、その考察を一つの突破口としてみる予定である。

※参考文献:福間聡「死者に鞭打つ」ことは可能か――死者に対する危害に関する一考察」

ci.nii.ac.jp

 

②15:30~17:30

岡崎 佑香 (フェミニズム批評)

     "ヘーゲルアンティゴネー論とフェミニズム"

 ヘーゲルが『精神現象学』精神章で展開する『アンティゴネー』論は、フェミニズム批評――有名なところでは、セイラ・ベンハビブ、リュス・イリガライ、パトリシア・ミルズ、ジュディス・バトラーによるものが挙げられよう[1]――において、度々論じられている。

 Mary Rawlinson [2]によれば、これらのフェミニズム批評に共通してみられる特徴は、ヘーゲルの捉え損なったアンティゴネーの政治的意義を各々の観点から再評価するという点であり、こうしたアンティゴネー再評価のなかでその意義が見逃され、ときにアンティゴネーを再評価するために不当に過小評価されているのは、ポリネイケスのもう一人の妹でありアンティゴネーの妹でもあるイスメネーである。こうした背景をふまえ、イスメネーや、イスメネーとアンティゴネーの姉妹関係に焦点化するいくつかの先行研究を参照しながら、『アンティゴネー』においてイスメネーとアンティゴネーがどのように描かれているかを確認する。

 以上をふまえ本発表で考察したいのは、当該章でヘーゲルが『アンティゴネー』を参照しながら論じる、「女性」および「姉妹」概念についてである。従来の研究においては、ヘーゲルが「女性」や「姉妹」について論じるとき、それは暗にアンティゴネーのことを意味するということが前提とされてきた。これに対して本発表は、ヘーゲルが「女性」あるいは「姉妹」というとき、それが意味するのはアンティゴネーとイスメネーが念頭に置かれていることを論じ、ヘーゲルの「女性」/「姉妹」論の新たな解釈をひらくことを目指したい。

 

[1] ベンハビブ、ミルズ、バトラーの批評については明石憲昭(「ヘーゲルジェンダー論をどう読むか?――ヘーゲルの男女観に関する一考察」、木本喜美子・貴堂嘉之編『ジェンダーと社会――男性史・軍隊・セクシュアリティ』、2010年)を見よ。

[2] Mary C. Rawlinson. (2014). “Beyond Antigone: Ismene, Gender, and the Right of Life.” In The Return of Antigone.

 

 

同日18:30より小倉北区内にて懇親会を開催する予定です。会費は5千円程度の予定です。どなたでも参加できます。

出席希望は「vortexsitoneあっとまーくgmail.com」、逆巻までemailで通知願います。
〆切は11月5日(土)。
準備の都合上、事前の出席通知をお願いいたします。
領収書も用意しております。

 

 今回で「文芸共和国の会」も第四回を数えることになりました。これで福岡・山口・広島と三県を一巡し、また福岡に戻ってまいりました。今回は北九州市立大学です。市民のみなさんにとっては、もしかしたらモノレールの競馬場前駅の近くにある大学と言ったほうがわかりやすいかもしれません。何を隠そうわたし自身その昔、ウィークデイは大学に、週末は競馬場に、と連日「授業」を受けておりました。高い授業料ではありましたが、懐かしい思い出です。

 土曜日はなるほど、中央競馬の開催日であり、きっとみなさん、翌日のGⅠレースを睨みつつ、思考力をフルに発揮されることでしょう。しかし、馬券は今やネットでも買えるではありませんか。競馬場に向かう足を大学のほうに向けていただければ、競馬とは異なる思考の世界が広がっています。一度、人文学の専門知に触れて、競馬とはまた一味違った思考力を働かせて、みんなで対話してみませんか。

 競馬場のすぐ隣で行われるこのたびの会が、市民の方々にとって人文社会系の知を身近に感じるよいきっかけとなることを期待しています。もちろん、学者のみなさん、生徒/学生/院生のみなさんもどなたであれ歓迎します。

                                   (文責: 逆巻 しとね)