文芸共和国の会

考えるためのトポス

10/12 みやの×いそのイベントのご案内

 

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『急に具合が悪くなる』書影


一昨年の「印象」シンポに登壇いただいた宮野真生子さんが、昨年の「技術と人間」シンポに登壇いただいた磯野真穂さんと共著を刊行することになりました。10/12に出版を記念したイベントを開催し、縁あってわたし逆卷が聞き手を務めることになりました。詳細については下のほうをご覧ください。
 また10/05ごろから、会場となる「本のあるところajiro」さんにて、みやの×いその選書フェア20も開催します。選書リストをまとめた小冊子をajiroさんにて配布予定です(現在鋭意製作中です)。

※予約申し込みフォーム

docs.google.com

※なお、同日10/12 15:00~17:00、同じく本のあるところajiroさんにて、宮野さんが一昨年の印象シンポの際の発表した内容を論文化したものを読む会を開催します。こちら参加者には事前にpdfで配布します。参加費無料・ワンドリンク・定員12名です。定員に達し次第、締め切らせていただきます。

申し込みは、逆卷(vortexsitone@gmail.com)まで

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』刊行記念イベント

「「救い”あう”」関係を作る言葉は、いかに生まれうるか?ーー意味の争奪戦を超えて​」

司会・聞き手:逆卷しとね
話題提供:磯野真穂

2019年10月、哲学者・宮野真生子と人類学者・磯野真穂との20通の往復書簡である『急に具合が悪くなる』が晶文社より発刊されます。

宮野と磯野の出会いは、2018年9月15日、逆巻しとねが主催する「文芸共和国の会」に磯野がスピーカーとして招かれ、宮野がそれに参加していたことがきっかけでした。

宮野が磯野の発表に対して意見を述べたのは、磯野が「病をめぐる<意味の争奪戦>」について語った時。

「意味の争奪戦」とは、一人/複数の人々が、ある人の病に関わる状況が生まれた際、その周りにいる人が、病む人の代弁者になるための政治闘争を繰り広げることを指します。

例えば、延命措置の決断に迫られた時、 病を持つ本人や、その人と関係を一番深めた人ではなく、突然現れた声の大きい親戚や、多くの知識を持つ医療者などが、「本人のために」という善意を掲げながら、延命措置の有無を決めてしまうといったような状況がこれに当たります。「あなたのために」と言いながら、本当は自分のために、相手の生きる力を奪うことも同様です。

「意味の争奪戦」は、病を持つ人と、そうでない人との間だけではなく、様々な関係で起こりえます。そして、その思想は、子どもだからこうすべき、恋人同士だからこうすべきといった、名前のつけられた関係で互いの役割が固定された結果、関係性から動きが奪われたり、どちらかがどちらかの声を封じたりすることの危険性を発信し続けていた、宮野哲学と通ずるものでもありました。

その結果(かはわかりませんが)、宮野と磯野(通称:ダヴルノマ)の間では、関係性に名前がつけられないという「関係性」がうまく利用され、意味の争奪戦が起こらない言葉のやり取りが可能となりました。しかし互いが全力投球で言葉を投げ合うその過程には、ともすると分断が生じかねない局面もあり、それを乗り越えて編まれたのがこの書簡です。

共に生きることを可能にする一方で、分断も容易に引き起こす言葉の力の両義性。
前者の力を最大限引き出すには、どうやって、どんな言葉を使えばいいのか。
意味の争奪戦による分断はどのように避けることができるのか。

20通の書簡のやり取りを振り返りながら、「動きのある関係性」、「戸惑う力」、「信頼を未来に投ずる」をキーワードに、それぞれが互いを「救い”あう”」言葉の可能性を探ります。

司会と聞き手は宮野と磯野の仲人、逆卷しとね。ぜひ、ご参加ください。(磯野真穂)

<関連書籍>
宮野真生子『出逢いのあわいーー九鬼周造における存在論理学と邂逅の倫理』(堀之内出版)
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909237422

磯野真穂『ダイエット幻想ーーやせること、愛されること』(筑摩書房
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480683618

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日時:2019年10月12日(土)19:00~21:00(開場 17:30)
出演:磯野真穂さん(文化人類学者)、逆卷しとねさん(学術運動家・聞き手)
場所:本のあるところajiro(福岡市中央区天神3-6-8 天神ミツヤマビル1B)
共催:文芸共和国の会、からだのシューレ
参加費:1500円(学生 500円)
お問い合わせ:ajirobooks@gmail.com(担当:藤枝)
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【プロフィール紹介】
宮野真生子さん(みやの・まきこ)
福岡大学人文学部准教授。博士(人間科学)。京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。専門は日本哲学史・日本思想史。近代日本の哲学者九鬼周造の研究を核とし、「恋愛」と「自己」 の問題、および愛・性・家族の思想史を扱っている。 主な著作として『なぜ、私たちは恋をして生きるのか—「出会い」と「恋愛」の近代日本精神史』(ナカニシヤ出版)、『愛・性・家族の哲学』(共編著: ナカニシヤ出版)他。

磯野真穂さん(いその・まほ)
国際医療福祉大学大学院准教授 博士(文学)。身体、医療、科学技術をキーワードに研究活動を続ける傍ら、「学問はみんなのもの」をモットーに開始された、一般向けの学術イベント「からだのシューレ」を2016年より継続中。医療者向けの質的研究のセミナーも多数こなす。主な著書に『なぜふつうに食べられないのか―拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界―いのちの守り人の人類学』(ちくま新書)、『急に具合が悪くなる』(宮野真生子との共著)、『ダイエット幻想ーやせること、愛されること』(ちくまプリマー新書)、”The Fat Studies Reader” (分担執筆:New York University Press)などがある。
研究業績:https://researchmap.jp/mahoisono, ツイッター: @mahoisono, note: https://note.mu/isonomaho

逆卷しとねさん(さかまき・しとね)
「文芸共和国の会」主宰/野良研究者。専門はダナ・ハラウェイと共生・コレクティヴ論。最近の書き仕事:共著『在野研究ビギナーズ 勝手に始める研究生活』(荒木優太編著、明石書店)、連載「ウゾウムゾウのためのインフラ論」https://webmedia.akashi.co.jp/categories/786、展評:菅実花展(https://bijutsutecho.com/magazine/insight/20349#.XV4KxLlMXzg.twitter)、論稿『ユリイカ』トニ・モリスン特集(2019年10月号 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3347)、インタヴュー「在野に学問あり」https://www.iwanamishinsho80.com/contents/zaiya3-sakamaki、翻訳「ダナ・ハラウェイのインタヴュー」https://hagamag.com/uncategory/4293 など。